学園と寮での生活について綴った日誌
Star Seeker

今日の学園は、いつもと違う。
滅多に見ない風景だ。

普段は寝坊寸前まで寝ているのに、今日は朝早くから廊下をうろうろする姿。
いつも髪が跳ねているのに、今日は鏡の前で寝癖を撫で付けている姿。

忙しなく、寮とサロンを行き来する姿。

学園がそわそわと浮き足立っていて、落ち着かない。


かくいう僕も、いつもより少しだけ、緊張した朝を迎えた。

割とあっという間に迎えた今日は、きっと、みんなが思っている以上に楽しみにしていた。
僕よりもずっと楽しみにしていた生徒がほとんどなのだろうけど。

全寮制の学園はとても充実しているし、なんだかんだで刺激も多い。
勉学やピアノ、新たな発見、人間関係…

けれど、学校外の人と会うのは、それだけでたくさんのことを教えてくれる。

話題はどんなものでもいいんだ。
学生なら通っている学園のこと、
教師なら専門教科のこと、
ピアニストなら、鍵盤に指を置いているとき、なにを感じているのか、
とかね。

どんな話をどんな表情で、どういう風に語ってくれるのか…

その人が話すことは全て僕にとっては新鮮で、初めてのこと。
たくさんの人と話すと視野が広がると思うんだ。

だから今から、どんな人に会えるのかとても楽しみなんだ!


さて、僕もそろそろ、サロンへ向かおうかな。
いつもより幾ばくか軽い足取りで、転ばないようにしないとね。

グレンに見られたりしたら、またあの、眉間に皺を寄せた表情で
「頭の中は花畑なんじゃないの?」
なんて言われかねないからね。

本気でそう思っているのか、本人に聞いてみたいとことではあるけれど…!



ミス.ラファネルの焼くスィーツの香りが強くなってくる。

いよいよ、ティーパーティーの幕開けだ。




あ、ねぇ、そこのキミ、ウェントワースの学生かな?

キングス・カレッジ・オブ・ヘイスティングスへ ようこそ!


キミはどんな話を聞かせてくれるの?
10:50 (30-27ago)ランディ - -
You can touch the sun


『僕は君のこと、わりと好きだよ』

『そんな風に、感情表現が下手なところとか、実は意外と優しいところとか』



三年前のことを思い出す。

そうだ、僕は、彼が本当は優しいことを知っているじゃないか。




なんであんなに頭に血が上ってしまったんだろう。

アレンに対する大人気ない態度とか、
聞いた話によると、ハインツにも同じようなことをしているとか。

そういうのはやっぱりよくない。

僕だってグレンにとっては“先輩”なんだから、ちゃんと注意しないと。


そんな“先輩”にだって憎まれ口を叩くグレンだけれど、
確かに…

ロバートの言うとおり、
僕にとってグレンは価値のある人間で、
魅力的に見えるからいっしょにいるんだよな。

まぁ具体的にどこが、って訊かれると、まだまだ胸を張って言えないんだけれど…

だから、放っておけないんだ。



僕はグレンのことをそう思っているけれど、

…グレンは僕のこと、そんな風に思ってくれてるのかな



やっぱり彼の言動に、僕が勝手に振り回されているだけなんだよなぁ
16:16 (30-27ago)ランディ comments(0) trackbacks(0)
Fragment



穏やかな午後

新入生歓迎会での僕らの演奏は、後輩に希望を与えるだろう。

日々上達するとはいえ、チェロ奏者も練習を欠かさないから、その差はちっとも埋まらない。
僕はそれ以上に譜面と向き合うけれど…

ひとしきり音楽堂でこっそり練習をした、サロンまでの廊下。

あの階段の影にいるのは…?

二年生のハインツと、グレン?
もう一人いるけれど、ここからでは影になって見えない。

ピリピリと緊張が走るその一角。


グレンが後輩を睨みつけ、そのまま踵を返した。

取り残されたハインツはうつむき、誰もいなくなった現場を後にする。


…まったく、なにをやっているんだグレンは。
後輩ができた途端、あんなふうに下級生をいじめるなんて。

抱えたスコアを一層握り締め、次に会ったら、彼に一言、言ってやろうと決意した。

14:42 (30-27ago)ランディ comments(0) trackbacks(0)
It's a Spark



サロンの扉を静かに閉める。

どこからともなくヴァイオリンの音色が聴こえる。
この旋律は、同級生のイアンの、かな。

新入生歓迎会のためのリハーサルに追われる夏休み。
開いたスコアの白さに反射する日差しが眩しい。
鼻歌交じりで音符を追う。

後にしたサロンでは、個性豊かな友人たちが各々の会話に一生懸命になっていた。
家族の話、課題の話、昔話…

「バルフォア先輩!」

そんな雑踏を背中で聞き流しながら廊下を歩いていると、明るい声に呼び止められる。

「やあ、アレン」

明るい笑顔が、窓から差し込む日差しで輝く。
新しく二年生になるアレン。
彼が抱えるスコアの束の中に、真っ新なそれが一部。

「新しいスコアだね?」

アレンの表情がさらに輝き、でもすぐ困ったような笑顔になった。

「ミス・リナルディに尋ねる前に、先輩に訊こうと思って…」

まるで、ピアノを始めたころの自分を見ているよう。
うつむいた彼の前に手を差し伸べる。
手渡された譜面は、意外にも、見覚えのある…

ショパンの、


ふと、こみ上げる笑み。

「懐かしいなぁ」


知っている音符の列。
音符を指で追うと、それがそのまま頭の中で音となる。
彼の弾く、チェロすらリフレインする。

問題が解決してすっきりした表情のアレンが走り去る方向とは逆に、再び歩みを進める。


行き先は音楽堂。
さっきとは違う曲を謳いながら。


イアンのヴァイオリンはもう届いていない。
代わりに、数段階低く響く音。

きっと、もうすでにいるだろう彼を想像して、そっと扉を開けた。

09:17 (30-27ago)ランディ comments(0) trackbacks(0)
一週間が経ちました



あの日、僕があれだけ怒ったというのに、
ラングフォード先輩ってば…また僕にやらせる気ですか?
今度こそ、僕が被害者になる前にハウエル先輩と
スペンサー先輩に言いつけてやるんだから!



オープンキャンパスで新入生の皆さんや
見学者の方々の案内をしてからというもの、
僕の中の歓迎会に対する熱意が高まってきたみたいです。

伝統あるこの学園に恥じないよう、来てくれた
みんなに「良かったなぁ」と思ってもらえるよう、
いい演奏にしなくちゃね、グレン!


え、何?
僕のピアノじゃそんなの思えないって?
そりゃ…ルーベンス先輩に比べたら
自分でもまだまだだって思うよ。

けどさ、今回は僕にって言ってもらえたし、
それに、チェロ奏者が君だったから…
これでもちゃんと頑張ってるんだよ!

でも…グレンは、ルーベンス先輩と演奏したかったんだろ?
言われなくても、君の気持ちはわかってる。


誰だって、上手い人と一緒にやりたいもんね!


ルーベンス先輩のピアノは、それはもう綺麗だから…
って…え、何だよため息なんかついて!
わかってないなって…
それじゃ、何か別の理由でも…



あ、ちょっと!グレン!
練習中なのにどこに行くんだよ!

10:56 (30-27ago)ランディ comments(0) trackbacks(0)
チェロとピアノの関係


夏休みに入ると、この寮もどこか寂しくなります。
それでも、監督生の先輩方は――いや、スペンサー先輩だけは、
忙しそうに歩き回っていて…
ハウエル先輩に言った方がいいのかな…


そういえば、ルーベンス先輩も、今年はこの寮に残るみたいです。
新入生歓迎会での演奏が僕になったのも、
ルーベンス先輩が忙しいから、というのが理由だったんですけど…

新入生歓迎会の為に残ったのかな…?
今度、機会があったら聞いてみよう!


そして…またグレンが見つからないんです。
そんなに僕と練習したくないのかな…


ショパンといえば、ピアノ独奏曲が主流ですよね。
そんな彼が、今回僕が演奏する『チェロ・ソナタ』という曲を
作った理由、知ってますか?

彼の親友が、チェロ奏者だったんですって!
ショパンの楽譜を清書したり、とにかく彼の支えとなっていた親友に、
感謝の気持ちを込めて作ったのが、この『チェロ・ソナタ』。


なんか、いいですよね!
二人の友情の証って感じで…

せっかくそんないい曲を演奏するんだから、
グレンとも友情を深めないとね!




さて、気まぐれな僕の後輩はどこかな?
14:08 (30-27ago)ランディ comments(0) trackbacks(0)
ショパンと夏の始まり
001

皆さんこんにちは!
キングス・カレッジ・オブ・ヘースティングスの三年生、
ランディ・ウーゴ・バルフォアです。
ランディって呼んで下さいね!


気が付けばもう七月。
新入生歓迎会まで二ヶ月だなんて、早いなぁ…

今年はルーベンス先輩が忙しいから、僕がピアノを
弾くことになったんですけど…
僕一人の発表なら、もう少し気楽に練習が出来たと思うんだよなぁ…


演奏する曲は、ショパンの『チェロ・ソナタ』第三楽章。
チェロ奏者はあのグレン。
根はすごくいい奴なんだけど、僕のことを先輩として
見てくれないのが困りもの。

話しかければ、いつも「何だ、ランディか」と明らか嫌そうな顔をする。
まぁ、チェロの腕前は確かなんですけどね!
足を引っ張らないよう、僕も頑張らなくちゃ!



あ、それから、僕はハウエル先輩のお世話係もしているんですけど…
先輩は、何というか、すごくマイペースで…
お部屋にいらっしゃらないと思ったら、サロンで一人お茶を
飲んでいたり、監督生としての仕事をスペンサー先輩に任せっきりに
したり…

先輩が焦ってるところなんて、見たことないです。
スペンサー先輩も大変なんだろうな…



おっと、もうこんな時間だ!
早く音楽室へ行って練習しなくちゃ…!

08:26 (30-27ago)ランディ comments(0) trackbacks(0)
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