学園と寮での生活について綴った日誌
僕らの体温

薄暗くなり始めた室内 

明かりを点け、テーブルの上に楽譜と本を放るように置いた。 





ベストを脱いで椅子の背にかけ 

次いで、軽く息をつきながらタイを緩める 




目線だけ向けた反対側のベット 

そこに横たわる一つの人影



窓から夕日が差し込み、逆光で相手の顔色は見えないが・・・ 



たぶん、今朝より症状は悪化している。 

ミス・ラファネルが日中ずっと看病をしていたんだろう。 




ベットの脇に腰を下ろし額のタオルを取ってやると 

それは熱がこもり明らかに役目を果たしていなかった。 



彼の枕元の書類に目を移す。 



今朝、彼の様子を見に来たドランスフィールド先輩が頼みがあると、 

その場に居合わせた僕に置いていったものだ 





内容は監督生主催で開催される恒例の上級生のみのお茶会。 



今年はウェントワース校との交流会も含まれるらしいけど 

大体、こんな陳腐な企画を考えるのは一人しかいない。 



発情期の犬のつもり? 

フン、
馬鹿らしい。 






「ごめん・・・」 


「何が?」 


「・・本来なら僕が手伝うのに、君になってしまって・・・」 


「別に、君が謝る必要はない。特に断る理由も無かったし」 







それに今日のランディの浮かれ具合・・・ 

もしも二人きりになったとしたら 





本当に最悪だ。
 

 
05:22 (30-27ago)グレン comments(0) trackbacks(0)
極色の裏に



疲労を蓄えた身体を

傍にあるソファに投げ捨て、

強いスプリングに深く眉を寄せた。




安げなソファだ、

寝心地も悪い



「…はぁ、」



照らしたアルコールランプの光が

視界の隅でちらつく。


(まったくもって面倒くさい)


ふと座った場所に違和感を感じた
ズボンのポケットを探るが何もない。



心当たりがあるとしたら…


いや、先ほど握り潰したメモは
送り主の場所に捨ててきた筈だ、ある訳がない。



じゃあ何だ?



ふと見たソファに先ほどの反動でこぼれ落ちた、”鍵”。



『今日も一層ご機嫌斜めって感じだね。王様は』


癪に触る声がした
この声は紛れもなくあの…


「ヴァレンティン。

その呼び方は止めろって言ったはずだけど」


『おいおい。

久しぶりに会った親友に

そんな目付きで睨むかなぁ?』



「親友?フンッどの口が…

休暇は家族で旅行じゃなかったのか?」


『それはもう行ってきた。

別に父の仕事のついでに付いて行った単なる観光さ、楽しかったけどね。
でも、1日中屋敷の中にいるとどうも落ち着かない。

ちょうど退屈していたんだよ。』



「…それで?」



『ブルクハルトも学園だろ?

誰かさんに苛められてるんじゃないかって心配になってさ。
そしたら、学園に着いたのが夕方になってた』



「君のそういう下世話なところが、大嫌いだ」


『誉め言葉として受け取っておくよ』


「フンッ、彼なら部屋にいる」


『ん、ありがとう』



馴れ馴れしい上によく口がまわる。


彼の馴染みだけあって部屋によく来るが
まぁ、害が無いだけ幾らかマシか。




やがて部屋は再び静かになる
手の平にある鍵を再び強く握りしめた。




今、繋ぎ止めていても

あのゲス、…先輩の事だ。
すでに自分の価値などしれている



だから、さっさと終わらせよう



茶番に付き合っているほど、


ーーーーー僕は暇じゃない。



どうせ、

全てが終わるその頃には

何ひとつ失うものなど無いのだから。


親友…

僕には一生縁のないものだ。

11:59 (30-27ago)グレン comments(0) trackbacks(0)
セピアの旋律


『ちょっとグレン!』


「そうやっていちいち僕の事に口を出さないで欲しいな」

『グレン!!』


バタン!!!


ベッドに身を投げ大きく深呼吸をする


何気なく
視界の隅に入ったカレンダーに目をやった



この不公平な世の中で。

最も平等に与えられた時間は、
人それぞれ決まっている


その中で僕は――
今しかないこの時間は、
僕のこの先の為にある



生まれた時既にあった道筋を
真っ直ぐ歩む為の…


ここは自分にとって
一生で一番浅く短い場所だ



ただ真っ直ぐ歩む為の――――


他人からしたら
生き急いでるように見えるだろうか?

いや、そう考えるのが愚かしいな。



人は一生が短いと思うからこそ
何かを追い求め悩み…そして貪欲になる



あほらしい。


その通過点の一つに過ぎないのに
今更こんな考えをするなんて相当自惚れてる


だけど時間は待ってはくれやしない――


僕は、この選択に後悔はない。



遠くからピアノの旋律が耳に入ってくる

「ランディか…」



キィ…パタン―――

馴染んだ静かな空気を背中の後ろで感じ、

ゆっくりと瞼を閉じた
18:39 (30-27ago)グレン comments(0) trackbacks(0)
錆付いた鍵



ページをめくる音、乾いた空咳。
図書室のそんな雑多や騒音をよそに迷いもなく歩を進める。


図書室の最奥ーーー

専門書の中でもなかなか用のない部類の本がひしめき合っている場所に…

めったに人が訪れないこの深部の書架の影で
小さく反射した金属を見つけた。


(やっぱりここにあったか…)

近くに寄り見覚えのある鍵だとわかると
括られたヒモに手を伸ばしズボンにしまう

ふと無意識に取った手元の本のページを意味も無く開く
が、簡単な単語の羅列だというのにまったくもって呑み下せない

雑に本を閉じ棚に押し込んだ。

それでも様々な感情が染み付いたこの場所に居心地の悪さは消えない

そう、普通の人間ならそこで立ち去りたいと思うところだろう
しかし残念ながら僕はそういう質ではない。

何よりこの空間が嫌いではないからだ
さわさわと真上の緑が影になって揺れる

静寂も耳に貼り付けば
気にもならなくなっていた。


カタンーーー

『…グレン?なんでここに?』

後ろから気配をちらつかせたのは意外な人物。
柔和そうでいて遠慮がちに笑みを浮かべる見慣れた顔だ。

色素の薄い瞳が細められる


「別に、なんでもないよ。

ーーーーーーーブルクハルト。」

18:16 (30-27ago)グレン comments(0) trackbacks(0)
季節の序章



三方が森に囲まれた音楽室の窓の外では、
この国では珍しい薄桃色の小さい花びらが風に舞う


季節はずれの遅い春。

気候が不安定な4月の冬を越えたためか
温暖の差の激しい今年は随分と遅咲きだ。

レースのカーテンが風をはらんで揺れる

そして。

屈折した厚めのガラス越しに
いまだ夢の中にいるだろう彼を見た。

薄暗く、光もろくに入らないこの部屋は
西日を浴びいつになく日差しで目が痛い

そのせいだろうか

日溜まりの中で樹の根に腰を下ろし、
反射する髪が透き通って見えた。



「はぁ…」

時計の針を一瞥し背を向け、
同時にらしくない溜息が漏れる


このまま起こしても目が覚めるのは時間の問題だ。

まったく何の為の練習なのか
呆れ果てるとは正にこの事だろう。


この後は…確か朝にティータイムの約束をしていた。
取り寄せたばかりの最高級のダーリン・ファーストフラッシュ。


予定の時間よりも一時間早いが関係ない。


独特な古紙の匂いに溢れているあそこならーーー


(まず間違いなくいるだろう…)

うつむいて小さく笑う。


広げていた楽譜を重ね鍵の束を掴むと
軋む床板の音が扉へ向かった。

14:58 (30-27ago)グレン comments(0) trackbacks(0)
真実と共に。



ミス・キャニングが留守であるこの時間帯の図書室は
生徒の姿は殆んど見受けられない。

光に当たり、ちらちらとはねる埃を
さも目前で見ているように錯覚した。
知らず顔をしかめる。


そして。


いつも自分の気分を苛つかさせるものを部屋の隅に見つけた。


「や、やぁ・・・っ」


相変わらず、鈍くさいというのか なんというのか・・・
その人物は怯えたように引きつった笑顔で挨拶してきた。

表情に変わりないのは何時ものことだが、今日は多少疲れているらしい。


存在感のうすい彼がじっとしていると、本当に置物のようだと思う。
声を掛けられなければ、ずっと気づかなかったに違いない。

何処まで自分の行動を目撃されていたのかと考えると、
さらに腹立たしい。


(もっと早く声をかければいいものを・・・)


『何の用?』

いつから部屋にひそんでいたのかは知らないが、
新学期最初の試験にむけて勉強中だったはずだ。

そうそうぼんやりもしていられないんじゃないか?
不機嫌さも隠さずそっけなく言う。


「休暇後の新学期だから・・・」


『フッ、面倒事が押し寄せるわけだ。』


「う、うん・・あまり抜け出してくるわけにもいかないんだけれど・・・」


どうもはっきりしないその物言いに深く溜息をつく。


『オルグレン先輩、避難する場所なら他を当たってもらえますか?
 そこにいられると、気が散って迷惑なんですけど。』


「あ、あのさぁグレン・・・!

 この前、どこに行ってたの?
 まさかとは思うけれど・・っ」


バスンッ!!
バタタ・・・


本棚に収めかけていた本達を手元にもどし

頭上まで振り上げて

相手の目の前に落とした


「あ・・・・」


無言の睨みに、また退くように縮み込んだ。

これほどまでに気持ちを逆なでされる相手はそういない。


「ご・・ごめん・・・
 何でもない・・・・・・」


『そう・・だったらソレ。

 片付けておいてよ・・・―――先輩。』


カーテンからのぞく夕暮れのオレンジ色が強く部屋に差し込む。


その光で
皮装丁の分厚い本に刻まれた表紙の文字が
より一層深く浮き上がって見えた。

18:44 (30-27ago)グレン comments(0) trackbacks(0)
Black sheep



――――・・・Baa, baa,
black sheep,
Have you any wool?
Yes sir, yes sir,
Three bags full.
One for my master,
One for my dame,
And one for the littleboy
who lives in the lane・・・――――


学園の裏にある湖の先には、広く深い森の様な林が続いている。


一歩。
また一歩・・・追い詰める。
息を切らし、走る連中。

時々振り返る顔が、酷く憎悪に満ちていくのが手に取るようにわかった。

だからといって。
何をするわけではないが、逃しもしない。


それにしても・・・
こうして一人に対して、
追い込まれて逃げて行く群れの姿はなんとも滑稽だ。

しかし、そんな光景も次第に見飽きてきた。

手入れが行き届いるためか、林の中は地面は葉で覆われているものの。
衣服に土や草のかすれたような汚れはしない。

ただ・・・蒸し暑さだけが常に感じる。


終わったらすぐ寮に戻ろう・・・
なんて事を考えてる最中でも、雑音はなおも続く。


―あいつが悪い―

――あいつさえ何もしなければこんな事にはならなかったのに――


相手が自分に対して何を思ってようが、そんな事はどうでもいい。

元々、今に始まった事じゃないし、その原因が自らなのも確かだ。
(因みにそのことに対して、
直そうとも悲観的になったことなど一度たりとも無い。)


連中から発する叫びともいえる声が木霊となり、
葉の上を踏み走る音が林の中を響かせる。


時に・・・自分みたいなのが、
白い羊の中にいる黒い羊なんだろうとふっと思った。

幼い頃、母がよく歌っていた歌を思い出す・・・
僕の性格上、泣く事はしないけれど。

まぁ、でも・・・
こっちも嫌われ者らしく、最後まで『抵抗』させてもらう。


なんたって黒い羊は、一匹しか存在しないのだから。


連中の一人が足を滑らせ、地面に転がり落ちる。



『――――・・・もしかしたら黒い羊は色ではなく。
種、そのものが異なっていたとしたら・・・?――――』



「フン、馬鹿バカしい・・・君もそう思うだろ?」
恐怖で怯えた顔を見た瞬間、
僕の中にある何かが満たされた気がした。

18:37 (30-27ago)グレン comments(0) trackbacks(0)
宣戦布告を・・・


朝。
礼拝が終わり、廊下を歩いてたら生卵が飛んできた。


半歩横に避けたら、
後ろにいたオルグレン先輩に当たったが…

僕の知った事じゃない。


反射的に飛んできた方向に顔を向け
逃げてく人物達の顔を確認する。






へぇ…
報復のつもり?

フンッ…小賢しい。



身の程知らずの凡人共が。
何をするのかと思えばこの程度か。


休暇で浮かれたその根性を、
叩きのめしてやろうか…?


まぁ、確かに最近の僕は、少々大人し過ぎたのかもしれない。


緩い日常に刺激が足りないところだったし。

良いストレス発散にもなる。
悪い芽は早めに摘み取れっていうしね。



それにしても、杜撰なやり口―
なめられたもんだ。


さしずめ、次は僕の私物を盗んで裏の湖辺りに捨てるのか?


こんな古くて子供っぽい嫌がらせしかできないなんて
自分達の低能さを露呈しているようなもんだ。

実行に移すのなら・・・
予め周到に準備した計画を、確実に実行に移し
その後、迅速に証拠隠滅するのが基本だろ?



だけど、
そっちがその気なら
僕も一族の教訓に倣って、早めに排除させてもらう。



やられる前にやれ
やられたら、やり返せ
やるなら、迅速かつ徹底的に



お前達、程度。

その気になれば…
簡単に潰せるのだということを思い知るといい。




あぁ…
それにしても、本当にくだらない。
今度の冬の休暇には帰省しよう。

父上に途中経過を報告しなければならないし…
11:30 (30-27ago)グレン comments(0) trackbacks(0)
最近、前髪が鬱陶しい。


夏の夜は嫌いじゃない。

時々吹きこむ風が
心地よく、カーテンを揺らす。

ひとりの時間は好きだし、
読みたい本も色々考えなければならない事もたくさんある。

学校という狭い枠組みの中にいるのは…
それらの時間を有意義に過ごす事だと、父上は言っていた。


だからこそ。
今年の夏は、騒がしい寮内に残る事にしたんだ。

他人に邪魔をされない、静かな時間は
本来の、この休暇中にあるべきものだと思う。

この時ばかりは
日中の音も、暑さも、人目も、気にせず過ごす事が出来る。

喧騒や強い日差しが続くグラウンドで走り回ってる、
ワイラー先輩やランディをたまに見かけるけれど…
気が知れたもんじゃない。



そういえば。
今日、中庭の噴水で猫が溺れかけていたところを偶然見つけた。
学園に住みついていて、
ミス・キャニングが何度か餌を与えてるのを見かけている。


首根っこを持ち、そのまま掴み上げたら。
えらく暴れて威嚇し、爪を引っ掛けては
すぐさま校内に逃げて行った。

助けてやったのに、恩を仇で返すなんて…
猫のくせに何様のつもりなんだ?




だけど、そう煩わしい出来事ばかりじゃなかった。



その後。
音楽室でいつものようにランディと練習をしていると、
突然、ルーベンス先輩が訪ねてきたんだ…っ

それも、差し入れにマフィンを頂いた。
(作ったのはサロンのパテシェだろうが、あれは絶品だった。)

しかし、
それをランディの奴は惜しげもなく次々と食べていくものだからつい…

いや、決してわざとじゃなかったんだアレは…っ

ただ、
条件反射というか、無意識にというか――…
いつの間にか手が出ていたんだ。

腕を叩いただけで、
バシンッと炸裂した音を聴いたのは、あれが初めてだと思う。


窓の外は満月で、慣れない目に眩しく照り返す。
そろそろ見回りの時間だろうから部屋に戻るか…


明日になったら奴に湿布を渡そうか、正直迷っている。


ランディに謝罪なんて
死んでもしたくないけれど…
 
20:51 (30-27ago)グレン comments(0) trackbacks(0)
憧れの先輩



はぁ・・・
この内容の手紙を送るのは、もう何度目だろうか・・


書いて―
封をして―
送って・・・その繰り返し。

いちいち数を数えてはいないが
記憶してるだけでも軽く三桁はいっている。



ルーベンス先輩・・・
僕の想いは貴方に届いていますか?



そういえば先日、気になることが起きた。


監督生のハウエル先輩が、突然何を思ったのかルーベンス先輩宛に届いた
僕からの手紙を全て預かったらしい。


いずれ、ルーベンス先輩が監督生に相談して、
スペンサー先輩辺りが動くだろうと睨んではいたけれど・・

まさか、普段、サロンでお茶ばかり飲んでいて何もしない
お飾りの監督生だとばかり思っていたハウエル先輩が動くとは・・


まったくもって誤算だ・・


でも、毎回別の人物の文字を真似ておいて正解だったよ。


筆跡から僕に辿り着くなんて事になれば
元も子もないからね。


それから、ラングフォード先輩。
この前の一件は、他の奴らが口を割らなかったから、何とかやり過ごせたけど・・
先輩は意外と勘は鋭いから、特に要注意ってとこか。


僕はただ、ルーベンス先輩に想いが伝わればそれでいいのに・・・

なのに・・・!!
何故、関係のない周囲が邪魔をするのかが理解出来ない!


まぁ、いいさ・・・

僕は僕で。
今度は違う手を使うとするよ。

あぁ、同級生達とオルグレン先輩にも協力してもらう様に頼まないと。

勿論、次こそは誰にも邪魔されないように、
徹底した口止め方法を使って・・・ね。




ん?
なんだランディ。僕に何か用?

・・またその話か。
もうその話は聞き飽きたって言っただろう?
・・・って誰かさんに言っても無駄だよね。


まったく、
先輩の推薦が無かったら僕だって今頃は・・


っ・・・そんな目で見るな!鬱陶しい!!


ルーベンス先輩が完璧なのは当たり前。
今更何を言ってるんだか・・本当にわからないの?


・・・。


はぁ・・・
鈍感なところは相変わらずだね・・本当に。




ねぇ、そろそろ察したらどう?

11:07 (30-27ago)グレン comments(0) trackbacks(0)
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